ディプロマ条項の落とし穴
シンガポールの賃貸契約では、2年契約であれば大体ディプロマ条項が入っておりますので、皆さんもよくご存じのことと思います。ただ、この条項はどんな理由でも使えるわけではありませんので注意が必要です。
例えば弊社の賃貸契約書式では次のような条項となっています。
If at any time after the expiration of 12 months from the date of the commencement of the Tenancy Agreement, EP等の長期ビザを取得した主たる入居者 (FIN: EP番号) shall be:
(i) transferred out of Singapore permanently by his employer; or
(ii) terminated by his employer and is required to leave Singapore; or
(iii) for any cause whatsoever he shall be ordered to leave Singapore,
it shall be lawful for the Tenant to determine this tenancy by giving not less than 2 months’ notice or paying 2 months’ Rent in lieu of such notice. Such notice by the Tenant shall be accompanied by documentary evidence of (i), (ii), or (iii) herein (as the case may be) AND the notice period shall be deemed to have commenced on the date of receipt of such evidence by the Landlord.
「賃貸契約開始日から12ヶ月が経過した後、EP等の長期ビザを取得した主たる入居者 (FIN: EP番号) が次のいずれかに該当する場合、
(i) 雇用主によってシンガポールから永久退去を命ぜられること。
(ii) 雇用主によって雇用が終了され、シンガポールを去る必要があること。
(iii) 何らかの理由でシンガポールを去るよう命じられること。
賃借人は、2か月の事前通知もしくは、通知に代えて2ヶ月分の家賃を支払うことで、この賃貸契約を解除することができる。賃借人によるこのような通知は、(i)、(ii)、または(iii)(該当する場合)の文書証拠とともに提供されなければならず、通知期間はその証拠が家主に受領された日から始まったものとみなされます。」
簡単に言いますと、EPを取得してシンガポールに勤務している主たる入居者自身が、何らかの理由で国外退去を命ぜられたり、会社都合にて帰国や海外への転勤などの事由がある場合には、最低滞在期間12カ月と2か月の通知にて早期解約できるというものです。弊社の書式では(ii)では雇用終了に加えてシンガポールを出なければならないという追加条件が付いておりますが、ただ単に雇用終了とだけ記載されている場合もあります。その場合にはシンガポールの他の企業に転職する場合などもこのディプロマ条項が使える可能性があります。
気を付けなければならないのは、以下のような事情の場合にはこの条項は利用できないということです。
- 雇用主は変わらないのに、シンガポール内での引っ越しの場合。ーほかに良い物件を見つけたので、今お住いの場所から他のコンドなどに移転したいとしてもこの条項は使えません。
- 主たる入居者自身はシンガポールに残るが、家族だけが日本に帰国する場合。ー時々私もお客さんの契約更改時に相談を受けることがありますが、お子さんの教育の関係で2年契約の途中でご家族だけ帰国の可能性があり、ご主人は単身となるので家賃補助の観点からそのまま高額な家賃を支払い続けることが出来ない。
- お子さんの教育の関係で、お母様がお子さんの学生ビザに紐づけて長期滞在ビザで滞在していて、何らかの事情でお母様だけ帰国するような場合。
これらの事由にて早期解約できるようにするには、ディプロマ条項とは別にBreak Clasue(早期の解約条項)を入れてもらうように交渉する必要があります。各ケースの個別対策としてはいかが考えられます。
- シンガポール内での引っ越しという事由での中途解約の条項交渉は難しいかと思いますので、2年契約ではなく1年契約にするなどの方法が良いのではないかと思います。
- 教育の関係でご家族だけ帰国される可能性がある場合ですが、契約更改の場合と考えられますので、正直に事情を説明すればある程度理解してくれる家主が多いかと思います。この可能性をきちんと別条項として挿入しておけば問題ないと思います。
- お子さんがシンガポールの学校を続けれらなくなった場合は、学生ビザはなくなりますので、お母様のビザも延長等できなくなりますのでそういう想定の解約条項は受け入れられやすいと思います。ただお子さんがある程度大きくなり学校の寮などにて教育を継続する場合、お母様だけ帰国されることが考えられます。一番良いのは契約満了の時期に帰国を合わせるのが良いかと思いますが、他の事情があって中途の帰国の可能性がある場合は、やはり解約条項を入れる必要があるかと思います。こちらもきちんと説明したうえで交渉する必要があるかと思います。
去年は、香港からの入国者が急増したことが原因で大幅なレントの上昇がありました。途中解約などはレントが上昇しているときは家主にとってはレント収入増額のチャンスですので、途中解約も受け入れやすいかと思います。ただ今年に入ってからは現状はかなり変わってきております。契約にもとづかない早期解約は基本的には家主にとって受け入れがたいものになってきていますので、上記のような解約条項がない場合は多額のペナルティーを要求してくることが考えられますので留意が必要と思われます。
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