シンガポール住宅賃貸の教科書
作成:中矢隆 シンガポール政府不動産エージェント登録番号(CEA Reisgtration No):R050841E
所属: PropNex Realty Pte Ltd シンガポール不動産業者登録番号(CEA Licence No):L3008022J
賃貸契約してから、あるいは退去時に家主との間でもめたりしないようにするには、契約前とか入居時にきちんとチェックをして万全を期することが必要です。過去に聞いた例ですが、『車の音で眠れないので、別のコンドに移転したい』と言っても、契約はキャンセルできません。また入居後、『ベッドが柔らかすぎるので、硬いのに変えて欲しい』と言っても、家主が買い替えてくれる例は稀です。こういうような問題を避けるため、契約前と入居時のチェックで見落としがちな点をリストアップしてみました。
契約したい物件が見つかった場合、皆さんは窓からの景色や部屋のきれいさ、内装や家具が気に入ってということが多いと思います。ただ入ってから後悔しないように、契約する前にはコンドの周辺環境や当該ユニットの状況についてきちんと確認しておくべきです。また仮契約(Letter of Intent:以下略してLOI)を家主側へ出す時に、賃貸料や契約開始時期などの主要条件の他にリクエスト事項を出すように言われると思います。リクエスト事項というのは具体的には、家具や電化製品の購入や交換、ユニット内の設備や内装の修理・改善等が含まれます。何故LOIでこれらの要求事項を出すかといいますと、これらには費用が掛かるからです。家主の要求するレントを出せるとしても、その他にリクエスト事項が膨大で高額であれば家主はそのレントでは貸さないでしょう。ということで、こういう費用が掛かるようなリクエスト事項は契約してしまった後で『あっ、これを忘れていた』と付け足しても聞き入れてくれないのが一般的です。では契約前に必要なチェック事項を確認してみましょう。
2.建設工事計画
ここ数年住宅不動産売買市場の復活で、古い分譲コンドをディベロッパーが買い取り(En-Bloc 仏語でオンブロックと発音するが、地元の人は結構英語読みでエンブロックと発音している)、取り壊し再開発される物件が多数ありました。昨年マーケットの過熱を受けて政府が不動産売買に課税する加算印紙税率を上げたため、ここしばらくは出てこないと思います。エージェントも計画を全部把握しているわけではありませんので、ご希望のコンドの周辺にそういう計画が無いか確認の必要があります。コンドの建設はディベロッパーがマーケット状況を見て遅らせることもありますが、一旦工事開始を決めるとかなり早いペースで始まります。一番うるさいのが基礎工事と言われています。オンブロックが発表されてから結構時間が経っている物件は、政府のOne Map https://www.onemap.sg/home/ や道路マップのStreet Directory https://www.streetdirectory.com/を見ると出ています。その他は以下のようなサイトhttps://www.tracygoh.sg/en-bloc-list/で調べるしかなさそうです。でもこれも全部カバ―しているかは定かでありません。
6.購入が必要な家具などのリクエスト
家具がついていない物件で家具を付けてもらう場合には新規購入家具のリストを承認してもらう必要があります。どんなものが必要かは以下に参考までリストアップしました。それ以外にも古い家具や電化製品などで買い替えが必要なもの、電化製品、マットレス、カーテン、エアコン等、予算との絡みで家主とネゴ必要です。合意した家具のリストをLOIへ『家主が入居前までに準備提供する項目』として記載する必要があります。古い電化製品の買い替えを家主が拒否した場合、少額修理条項適用から外してもらう可能性を探ってみるのも一考です。
新しく家具を提供してもらえる場合には、1)家主が独断で選んで提供、2)家主が選ぶがテナントにこれで良いかと承認を求める場合、3)家主から予算を設定してもらいテナントがその予算内で家具を選ぶというような方法があります。
①一般的な家具の例
(注)上記には含めていませんが通常家具無し条件でもついているものとしては、エアコン、照明、カーテン、冷蔵庫、洗濯機、乾燥機、オーブン等があります。ただこれらが不備の場合には、これも含めましょう。特にカーテンはこちらの人の自身の感覚で、寝室は昼用カーテンは必要ないとか、リビングは夜用のカーテンが必要ないということでついていない場合がよくあります。
②予算が結構ある場合に追加する家具他の例
a.床のポリッシュ、壁の塗り替え等
リビングの大理石の床は人が住んで年数を重ねると光沢が失われますので、研磨する必要が出てきます。また寝室はパーケットという木材ですがこれもキズが目立ったり、ニスが剥げてきて光沢が失われてきますので、研磨とニス塗りが必要です。壁はきれいに使われていても、年数がたつにつれて汚れなどが増えてきます。再塗装で汚れや小さな傷等が修復できます。費用としては、大理石の床磨きは大きさにもよりますが$1000位は最低掛かると思います。また寝室のニス塗りは小さい部屋でも$500程度はかかるかと思います。壁の塗り直しはテナントが変わる度に、床は5~6年毎に自主的に行う善良な家主もおります。ただテナントがこれらを要求しますと、退去時に同じように修復を求められることがありますので注意が必要です。
原則としてキズや汚れなどに関しては、誰がいつ付けたかが争点となるものですので、最初入居前にあったものは入居時にそれをはっきりさせておく必要があります。例えば床、壁、家具のキズや汚れ等は引き渡しの時点で家主側に指摘して確認する必要があります。ただ細かいものまで一つ一つ確認するのは非常に時間がかかりますので、大きなものだけは引き渡しの確認時に指摘しておくことにしましょう。その他の細かいものについては、写真で記録(私がお客さん宅の引き渡し現状を記録する場合は、200位写真やビデオで記録を取ります)を取り後日家主側へ提出して記録に残しておくことが理想です。またシンガポールの契約上では契約後1か月間は家主の保証期間となっているのが標準です。例えば、電気製品が壊れて動くかなくなったとか、照明が点かなくなったとか、ドアや窓が閉まらない鍵がかからない、蛇口から水漏れがする等が対象になるかと思います。ただこの辺は契約書の内容によって解釈が違ってきますので、契約内容の確認が必要です。また保証対象となるものはテナントが故意に壊したものや操作を誤って壊したもには適用されません。以下具体的に確認事項説明します。
室内にあるインターコム
コンドでは各棟毎に入口もしくはエレベーターにインターコムが設置されており、そこに当該ユニット番号のボタンを押してドアが開いたり、エレベータがユニットのある階へ動くという仕組みになっていることが多いです。インターコムは、一人ではチェックできないためチェックし忘れがちです。1か月経過した後に、故障していることが判明した場合は、やはり少額修理条項の対象となりテナントが$150(契約により$200とか$250と言う場合もあります)まで負担して修理ということになりかねません。ロビー玄関にもう一人に行ってもらい、開錠、会話、画面がきちんと作動するか確認してください。また最近のコンドでは、インターコムの機械が部屋の中になく携帯等の電話に接続するタイプのものもあります。この場合はマネジメントオフィスへ行き、電話番号の登録を行ってください。
電子ロック外と内の写真
玄関の鍵は従来型のキーを鍵穴に挿入して回して開錠するタイプと電子ロックがあります。どちらが良いかはセキュリティー上の観点や問題が起きた時の費用負担等一概には言えませんのでこちらでは議論しません。従来型の場合は、引き渡しで渡されたものがきちんと施錠・開錠できる確認の必要があります。コピーされた鍵の場合、上手く開錠できない等の問題があったりします。また必要個数(仮契約書できちんとリクエストしておいた方が良いです)があるかも確認します。電子ロックの場合は、カード、暗証番号、指紋認証等複数開錠方法がある場合があります。暗唱番号の場合は変更方法なども確認してください。マスターコードが無いと変更できない場合もあったりしますので、きちんと確認した方が良いかと思います。ただ家主側もよくわかっていない場合が結構ありますので、問題がありそうだということは引渡しもしくは1カ月の保証期間内にきちんと認識させる必要があります。また電子ロックの場合マスターキーがあったりしますので、それできちんと開錠できるかや保管場所なども考えておいた方が良いかと思います。電子ロックの場合、電池交換がいつ行われたか、できれば入居時に交換してもらった方が良いかと思います。家主がケチな場合はご自身で交換して、4カ月に1度は交換することを御薦めします。電池漏れで壊れた場合、$500~$1,000位費用が掛かる可能性があります。
ソフトクロージング機能の付いたドア
玄関のドアには、ソフトクロージングという『バタン』と大きな音を立てて閉まらないような機能がついているものがあります。その場合にはきちんとそれが機能しているかを確認する必要があります。退去時に機能していないということで修理をさせられたり、費用請求されることが良くあります。機能していないときは、修理してもらうようリクエストすることもできます。但し退去時に再発していると同じように修理を要請されたりします。いずれにしても機能していないときは、きちんとビデオ撮影をして、引き渡しの現状として記録しておいた方が良いかと思います。こちらの画像できちんとソフトクロージングが機能している映像が見られます。
精々1㎝位のへこみですがこんなのも床の張替え費用を請求する家主がいます
6.床
キズ・汚れがあれば記録します。また全体の写真を撮り、入居時に塗り直しやポリッシュされた状態か、あるいは木製床の場合はニスがはげた状態か、大理石の場合は光沢が無くなっていたり染み等がついていないかなども写真記録したほうが良いと思います。また本当にひどい家主や家主エージェントがいます(引き渡しの時には簡単に済ますのに、明け渡しの時には虫眼鏡で見るようにチェックする輩がおります)ので、特に何もないと思っていても全体の写真等撮っておいた方が良いかと思います。きちんと写真が撮れていれば、細かい傷等も当初からあったかどうか確認できたりできますので。
冷凍庫の霜
洗濯機パッキンの汚れ
電池式の場合は電池入れが
コーヒーメーカー
10.電化製品
傷や汚れについては入居時に確認が必要ですが、これら以外の不具合については、家主保証の対象となりえるものです。1か月以内に全ての電化製品を頻繁に使い問題が無いか確認しましょう。
12.窓
よく見かけるのは窓枠のゴムが溶けたようにはがれてきたりするものです。また窓を開けるハンドルが緩んでガタガタしたりするのもよくあるようです。この辺も1か月の間に指摘しておけば、退去時に修理費用を請求されたりするのを回避できるかと思います。きちんとロックできるか等の確認も必要です。
ロックの部品が外れてしまっている
13.ドア
ドアの開け閉めに問題が無いか、特にバルコニーの引き戸の鍵はきちんとかかるかは確認事項です。時々閉めるの力が必要であったりしますが、大体はドアの重みでバランスが悪くなりドアとドア枠が擦れたりすることによって起きているようです。ベランダの重いドアの鍵は良く壊れていることがあります。また部屋の鍵を紛失したりしないよう、1つしかない場合はコピーを作っておいた方が良いかと思います。
画像の説明を入力してください
キャビネットのドアはきちんと閉まるか確認しましょう。ドアの重みでずれてしまい他の部分と擦れたりする場合があります。これは蝶番の調整等で簡単に修理できるものですが。クローゼットのドアは結構レールから外れたりしがちです。滑らかに動かなかったり、閉めてもドア枠にあたって跳ね返りきちんと閉まらない場合はラッチが機能していない場合があります。修理してもらうか、だめであれば記録に残しましょう。中に照明が設置されているものもあります、電気が点くことやドアを閉めた時に消えるかもチェックしましょう。キッチンのキャビネットも同じですが、抽斗についてはソフトクロージング機能がついていることが多いです。きちんと機能しているか確認しましょう。また抽斗の鍵がついているか、鍵がきちんとかかるかも確認が必要です。
15. 蛇口や配管
蛇口はぐらぐらしていないか、水の圧力や飛び散り等に問題が無いか確認する。水圧ですが、シンガポールはマレーシアから水を輸入しているような国ですので、節水の関係から日本と比べると水圧は低いです。また蛇口や配管等から水漏れが無いかきちんと確認する必要があります。あれば1か月の家主保証の対象として修理してもらうか、あるいは使用するのに問題が無ければ現状を記録して退去時に修理費用を請求されないようにしましょう。また水とお湯が出るタイプのものは、ヒーターを点けてお湯がきちんと出るかも確認が必要です。
便座裏側のクッション用の部品が2個無い
17. トイレ
流す水流等に問題がないか、タンクや配管が水漏れが無いか、便座等に汚れなどが無いか、便座とカバーの取り付けがぐらぐらしていないかなどを確認します。また便座の裏側にクッション等が無くなっている場合がありますので、そこまで確認します。また便座やカバーもソフトクロージング機能が働いているか等の確認をした方が良いともいます。
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