シンガポール住宅賃貸の教科書

作成:中矢隆 シンガポール政府不動産エージェント登録番号(CEA Reisgtration No):R050841E
所属: PropNex Realty Pte Ltd   シンガポール不動産業者登録番号(CEA Licence No):L3008022J 

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賃貸物件を自力で探される方への注意点

大勢の駐在員を抱えておられる会社では、総務部等で住宅賃貸のアドバイスをしてくれたり、会社の事情を良く知っている指定の不動産エージェントが面倒を見てくれるので問題ないと思います。ここでは個人でお住まいを探さなければならない方や初めて進出されてくる企業さんでは事情がわからない方を対象にした注意点をまとめてみました。

ミッションは払わなくて良い

シンガポールの住宅不動産賃貸での慣習として通常2年契約の場合、1か月家賃分のコミッションを家主が家主エージェントに支払い、それをテナント側のエージェントと折半するというのが一般的です。つまりこういう標準的な場合はテナントはコミッションを支払わなくて済みます。Propertyguruのリスティングでよく『テナントはコミッション支払い無し』と出ているのはまたちょっと事情が違います。基本的には彼らはリスティングしている物件の家主側のエージェントです。つまりテナントが直接問い合わせてくれば、テナント側のエージェントが居ないのでコミッションを折半せずに満額もらえるということです。ただ例外として、1年契約の場合は半月分しかもらえないこと、また2年契約でもレントが$3,500~4,000を下回ってくるとコミッション額が少ないので家主側エージェントがテナント側エージェントとコミッションの折半を拒み、『テナントからコミッションをもらってくれ』ということがあります。ただこれらは規則で決まっているわけではなく、弁護士報酬などと一緒で基本的にフィーは競争の原理で自由に設定できます。逆に$4,000を超えるレントなのに、家主側のエージェントと折半せずにテナントに1か月分のコミッションを請求するエージェントもおります。他のエージェントが出来ないような最高のサービスを提供するということで、お客さんも納得の上で高い報酬を貰うのは問題ないと思います。ただ、えてしてこういうエージェントは良く事情を知らないテナントへこれが標準の様に説明し、サービスのレベルも普通以下というのが実情かと思います。そんな提案をしてきたエージェントが居ましたら是非他のエージェントをあたってください。

注)前述してますが2022年半ばからマーケット状況を背景に、家主エージェントがテナントエージェントコミッションを折半しないというケースが殆どでした。この理由としては物件の供給数が少ないため、家主側が言い値で契約を成立出来る場合が殆どということです。ひどい例では、たくさん希望者がいることを背景に当初のレントよりさらに上載せしたレントを提示し来る場合があります。こういった場合、テナントが自身のエージェントを連れてくる会社契約のテナントが必ずしもより高いレントを提示するという状況でなくなったという状況が背景にあると思います。最近は更改レントが2年前の50%増しというような例がかなり多く、会社契約のテナントは会社の予算がマーケットの実勢についていけていないということが大きな要因かと思います。ただ2023年半ばになり、中々賃貸成約出来ない物件も増えてきており、コミッションを折半するエージェントも増えて来たようですので担当エージェントに確認してもらうのが良いと思います。

エージェントのお客さんは誰か

日本とは違いシンガポールでは不動産エージェントは家主(売主)とテナント(買主)の双方を代理(つまりお客さんとする)ことは出来ません。理由としては2者の利害が相反する(家主は高く貸したいし、テナントは安く借りたいというように)ため、どちらか一方をお客さんとして、『そのお客さんの利益を最優先させなければならない』という義務があるためです。賃貸物件を探そうとしている場合、不動産エージェントが絡む場合は家主側のエージェントなのかテナント側のエージェントなのかをきちんと把握しておく必要があります。例えばPropertyguruなどの不動産情報サイトをみると、色々なエージェントが不動産物件をリスティングしています。この人達は基本的には家主から依頼されて、物件を宣伝していますので家主側を代表するエージェントとなります。ただそのエージェントが他の物件も一緒に探してくれると言った場合には、逆にテナント側のエージェントとなる可能性もあります。つまり別のエージェントが持っている物件を借り手を代理して紹介することになるからです。ですので家主かテナントどちらの代理かを確認すること、そしてテナント代理の場合にはコミッション無しかまたそのサービス内容を確認してください。

エージェントのライセンス確認

ライセンスを持っていない人間が不動産エージェントと詐称して、テナント候補を案内し手付金等をだまし取ったというような事件が過去にありました。エージェントは不動産取引に関する仕事に従事している時は、免許証を常に携行しなければならないと規定されております。その免許証を見せてもらい、その写真を撮るかあるいはライセンス番号の記載のある名刺を貰いましょう。契約締結やお金の支払いなどをする前の早い段階で、CEACouncil for Estate Agencies:不動産仲介業者や不動産エージェントを監督する政府の機関)のホームページのPublic Registerにてそのエージェントが登録されているか確認しましょう。エージェントの名前、ライセンス番号、電話番号などでも検索できます。

不動産登記で家主の確認

上記と同じように家主と偽って家主でもないのに契約をして手付金やレントをだまし取るという事件も過去にありました。免許を持ったエージェントは当然不動産の登記等で家主が誰なのか確認する義務がありますので、エージェントを使っている場合は大丈夫だと思いますがエージェントを使わない場合は注意が必要です。正当な家主が誰なのかInlisというサイトで調べることが出来ます。出てくるページで最初の項目“Property Ownership Information $5.25”を選び必要事項を記入し、$5.25をクレジットカード等で支払うと登記記録がダウンロードできます。3ページ位のレポートですが、家主の名前やIC番号等が最後の方に出てきます。たたし新築物件等一部で登記移転に時間がかかりディベロッパーが家主として出てくる場合があり、その場合は家主側に何か代わりの証明になるものを出してもらうよう要求してください。

SOHOは住宅として住めないものもある

SOHOSmall Office Home Officeの略で、自宅とオフィスを兼用するようなコンセプトです。ただシンガポールでは、用途として住宅とオフィス両方が可能なものはありません。最近SOHO銘打っている物件で、住宅と思い賃貸契約しMOMに住所登録しようとしたところ、住居ではないので住所登録できないという事例を聞きました。URA(シンガポール都市再開発庁)はSOHOというコンセプトで不動産を分譲されていることに注意を喚起しています。ただ可能性として、住宅でもオフィススタッフが2名以下不特定多数の客などの来客が無いようなものは、コンド等はURAHDBHDBへその申請をすることによりオフィスとして使うことを認めています。ですので住宅用途のコンドやHDBではそれが可能です。ただオフィス用途であれば居住することは禁止されていますので、注意が必要です。

保証金や家賃の支払いは現金ではダメ

手付金や保証金は家主宛コミッションはエージェント個人ではなく不動産仲介会社宛に小切手か送金にて支払うようにしてください。別人宛や現金での支払は詐欺等に合う恐れがあります。現金払いは極力しないでください。別人宛への支払いを家主から要請されることがありますが、その場合にはその支払先との関係を聞くこと、また家主からその人宛に支払うことを指示するレターをもらっておく必要があります。

HDBを賃貸する場合

HDBはシンガポール政府が、国民が自分の持ち家を持てるようにという趣旨で建設され分譲されるものです。ということで最初の5年間は自分で住むことが義務付けられています。また5年を経過している場合でも、貸主はテナントをきちんと登録する義務があります。借りる側はきちんと自分がテナントとして登録されているか、家主側にHDB発行の証明書の提示を求めてください。以前は自分が住んでいるように見せるため一部の部屋に鍵をかけ、他の部分を貸しているケースがよく見られました。これは違法ですので、テナントが知らなかったとしても強制退去の可能性あります。実際に家主が住んでいて、空いている部屋を貸すのは問題ありません。ただこの場合も家主は間貸しの許可申請をする必要がありますので、上記と同じようにきちんと申請されているか証拠書類の提示を求めてください。

部屋借りする場合

HDBにしろ、コンド等HDB以外の物件で部屋借りする場合 も、注意が必要です。テナントではなく極力家主と契約する方が安全です。というのは通常の賃貸契約ではサブリースを認めていないからです。もし契約したテナントがレントの不払い等契約違反があった場合、強制退去の危険性があります。壁などを増設して部屋の小割や、居住人数が制限越えなど違法でないか確認する【以下の表参照】。また家主によって間貸し人には料理を許可しない場合があるので、料理が可能かどうか、ま他リビングの利用が可能か等も確認する必要があります。また間借りする部屋にエアコンの有無や、Wifi利用ができるか、水光熱費の負担なども確認する必要があります。

  転貸可能寝室数       入居可能人数(家主家族含む)
HDB 2-room(寝室1部屋)以下 転貸不可
HDB 3-room(寝室2部屋) 1部屋 6人
HDB 4-room(寝室3部屋)以上 2部屋 6人
コンド他(HDB以外) 特に制限なし 6人

最短賃貸期間

最短賃貸期間はHDBを除くコンド等は20176月から従来の6カ月から3か月へ短縮した。ただHDB6カ月が制限のままである。尚Airbnb等利用した3か月未満のHDBやコンド等での短期宿泊は基本的には違法なので注意が必要です。

賃貸契約は基本的に中途解約不可

シンガポールの賃貸契約では基本的に中途解約はできません。ですので住んでみて騒音がうるさい等の問題や、他に良いコンドを見つけたというような理由で契約解除することはできません。海外転勤等の特別な理由がある場合にはディプロマティック条項という特別条項必要ですので、それが賃貸契約書に入っていることを契約前に確認する必要があります。日本の賃貸契約は借家法にもとづいて中途解約が可能なケースが多々あるようですが、これは世界的な標準から言っても稀な例となります。

賃貸契約に必要な費用

2年契約の場合、前払い家賃(Advance Rental)1か月分保証金(Security Depositと言い日本では敷金と呼ばれるものです)2か月分が契約時に必要です。前払い家賃1か月分は通常Letter of Intent(仮契約:賃貸契約の基本的な条件に合意するもの)を家主側へ提出する時に小切手等にて支払います。またレント2か月分の保証金は賃貸契約書を家主側へ提出する際に小切手等にて支払います。この保証金は賃貸契約満了時に契約を遵守全うすれば全額返ってくるものです。テナント責任の修繕費用等を差し引いて返還される場合もあります。日本の礼金の様に契約満了しても返金されない類のものはありませんので気を付けてください。その他にテナントが支払う必要があるものは印紙税(Stamp Dutyスタンプデューティー)です。計算方法は家賃x期間(月数)x0.4%で少数切り捨てにて計算されます。自分の計算で不安という方はここから開けるエクセルのシートで計算できます。また印紙税はIRAS(税務署)のポータルにて支払うことが出来ます。

入居引き渡し時にすべきこと

 

入居引き渡し時には、家具などのインベントリーリスト(家具や備品のリスト)を確認し、鍵を受け取りその時点から住居はテナントの占有権が発生します。つまりそれ以降は家主といえども勝手に鍵を開けて入ることはできません。その反面それ以降に生じた家屋の傷や汚れ等はテナントの責任となります。そのためテナントはインベントリーの確認にはとどまらず、それらにキズや汚れなどが無いかを確認する必要があります。大きなものでしたらインベントリーリストにその旨記入することと、小さなものは写真撮影をして家主側に後日で構いませんので提出しておくことを御薦めします。

上記はエージェント無しで家探しを行う方の注意点を簡単に説明したものですが、実際に行う場合は別ページの『契約前と入居時のチェック事項』と『契約書類』を参照して進めるようにしてください。

その他メニューのご紹介

直ぐに役立つ情報はこちら

家探しから入居までの手順

家探しから入居までの手順を順を追って説明。自力で家探しの人も、エージェントを使う人も参考にしてください。

自力で家探しの方へ注意

自力で家を探す方へ注意事項をリストアップしました。

契約前と入居時の確認事項

契約前に確認しなければならない事項と入居時及び入居後1か月までに確認する事項をまとめました。

仮契約書(LOI)

仮契約書(LOI)とは賃貸契約の基本条件を記載したものです。これに合意し手付金を支払えば、物件の仮押さえができます。

賃貸契約書(TA)

賃貸契約書は全ての条件を記載したもので、これが締結されて初めて契約が成立します。

不動産登記の確認

稀にではありますが、詐欺などに合わないように不動産所有所の確認は必要です。

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